尿路結石症とは
腎臓から尿管・膀胱・尿道に至る尿の通り路(これを尿路といいます)に結石が存在する病気です。結石のほとんどは腎臓でつくられます。そして、その一部が尿とともに尿管、膀胱に流れ落ちるのです。結石が尿とともにスムーズに流れ、自然に排出されれば問題はありませんが、腎臓や尿管にとどまると、腰やお腹の激しい痛み・血尿などを起こすことがあります。放っておくと腎臓の機能が低下する場合もあります。尿路結石はその存在部位により腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石の4つに分類されます。しかし95%以上は腎結石と尿管結石です。
結石の成分について
結石を構成する成分には蓚酸カルシウム、燐酸カルシウム、尿酸、燐酸マグネシウム・アンモニウム、シスチンなどがあります。蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムが最も多く、これらは全尿路結石のうちの約2/3を占めますが、これらの多くは原因が不明で、一部の方に尿の中にカルシウムが多く出てきてしまう状態があることがわかっています。尿の中にカルシウムが多く出る状態としては、副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、寝たきり状態などがあります。尿酸は痛風に、燐酸マグネシウム・アンモニウムは尿路感染症に、そしてシスチンはシスチン尿症という生まれつきの病気の方に密接な関係があります。
発病率
一生のうちに尿路結石になる確率(これを生涯有病率といいます)は日本人では約10%ですので、ありふれた病気であるといえます。また、女性より男性に多い傾向があります。
治療法
治療の原則は以下の通りです。
- 疝痛発作時の対応
痛みには鎮痛剤(NSAIDs)を使用します。座薬の方が即効性があり、推奨されます。 - 排石治療
5mm以下なら自然排石を期待して保存的加療(長径8mmで自然排石率:約50%)
排石困難な結石に対しては後述するような砕石治療を行います
砕石治療には主にTUL(経尿道的結石破砕術)、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)という2つの方法があります。
当院にはESWL装置がないため、TULのみ施行しています。
そのため、尿管結石に対する砕石治療は主に関連施設である我孫子東邦病院に紹介させていただき、適切な治療を選択していただいています。
図:尿管結石のレントゲン写真とCT所見
経尿道的尿管結石破砕術(TUL)
経尿道的に内視鏡を尿管の中まで挿入し直接結石を砕き、取り出す手術法です。手術時間は結石の大きさや壊れやすさによって多少差はありますがおおむね1時間です。近年、内視鏡機器の性能の向上が著しく、特に軟性尿管鏡の発展によりこの手術は安全・確実に行えるようになりました。結石を砕くのにはレーザーを使用しますが、尿管を内視鏡やレーザーで傷つける尿管損傷、尿管の出血、手術後の感染症といった合併症を起こす確率が3%程あり、そのときには合併症に対する治療が必要となります。また、きわめて稀ですが、尿管が極端に狭いために内視鏡が尿管に入らない場合があり、このときはこの手術はおこないません。この手術には麻酔が必要ですから5~7日間の入院が必要で、3割負担の方のご負担は約12万円です。
再発防止
尿路結石は繰り返しできやすい病気です。10年間に約60%の方が再発します。したがって、予防がきわめて重要です。予防対策は結石の成分によって多少異なりますので、結石が尿とともに出てきたときには、その結石を拾って病院までお持ちいただき成分の分析をしてもらいましょう。
①すべての尿路結石に共通した注意点
第一に、水分を多く取り尿の量を増やすことで尿を薄めましょう。結石は尿に溶けている成分が固まりをつくってできるものですので、尿を薄くしておけば出来にくくなります。また、尿の量が多ければ仮に結石が出来たときには結石が砂のように小さいうちに尿によって流れ出てしまうので大きな問題とはなりません。水分は1日2~3リットルとるようにしましょう。お茶、ジュース、コーヒーでも結構です。第二に、運動をよくしましょう。尿路結石は寝たきりの方に多いことが知られています。これは運動が不足するために骨からカルシウムが抜けて尿から多くのカルシウムが出てくるためです。また、仮に結石が出来たとしても結石が小さいうちに運動によって落ちやすくなります。
②蓚酸カルシウム結石の方の注意点
蓚酸はほうれん草、ブロッコリー、紅茶、チョコレートに多く含まれています。昔はこれらの食べ物をとらないように指導していました。しかし、蓚酸はその他の食べ物にもいくらか含まれており、これらを避けても蓚酸結石が出来てしまうことがわかりました。したがって、現在ではお食事のときには牛乳をとるようにお薦めしています。牛乳にはカルシウムが多く含まれています。このカルシウムが腸の中でお食事に含まれる蓚酸と結合して蓚酸カルシウムとなり便から出てしまいます。その結果、体の中に蓚酸が吸収されにくくなり結石は出来にくくなります。
③尿酸結石の方の注意点
尿酸は蛋白の老廃物でお肉を多く食べる方、お酒を多く飲む方の血液の中で増えます。痛風という関節の炎症の原因にもなります。血液で増えた尿酸は尿から体の外に排泄されます。このときに尿が酸味を帯びていると尿酸は尿の中で固まりをつくりやすくなります。したがって、尿酸結石の方はお肉、お酒を控えるとともに尿が酸味を帯びているかどうか病院でチェックしてもらいましょう。尿のpHが5~5.5であれば尿は酸味を帯びていますので、尿の酸味をとるお薬(ウラリット、重曹といったお薬になります)を処方してもらうことができます。
④燐酸マグネシウム・アンモニウム結石の方
長い間尿路感染症があることによりできる場合が多いので、抗菌薬を内服し尿路感染症を治しましょう。この場合、結石が体に残っているといくら抗菌薬を飲んでも菌は消えませんので、まず結石を取り除くことが大切です。
⑤シスチン結石の方
チオラというお薬と尿の酸味をとるお薬(ウラリット、重曹など)の両者を飲むと再発しにくくなります。
結石発作のときの注意点
結石の痛みは激しくつらいもので、救急車で病院を訪れる方もいます。これは結石が尿路をこすって起こるものではなく、結石が尿の通り道を急に塞ぎ尿の渋滞が起こるためのものです。すでに結石発作を経験されている方はご自分で結石によるものであることはおわかりになると思いますので、そのときの対処法を挙げておきます。まず第一に鎮痛薬の坐薬を常に持ち歩き、まずこれを肛門から挿入します。そして、痛みのある部分を暖めることが大切です。ご自宅にいらっしゃるときにはお風呂にお湯をためて入ると絶大な効果があり、多くの方は30分ほどで痛みが楽になります。外出の際にはカイロを坐薬とともに持ち歩き痛みの箇所をカイロで暖めましょう。
痛みを止めるものにはブスコパンという飲み薬があります(病院ではこのお注射があります)。飲み薬は坐薬に比べて効果がでるまで時間がかかりますのであまりお薦めできません。日頃から病院で坐薬を処方してもらいましょう。
尿管結石嵌頓による閉塞性腎盂腎炎(結石性腎盂腎炎)
急性腎盂腎炎は尿路結石嵌頓に起因する最もポピュラーな合併症です。38度以上の発熱・背部痛などが出現します。
尿路閉塞に伴う閉塞性腎盂腎炎は、簡単に敗血症という命に係わる状態になるため、十分な注意が必要です。特に、糖尿病やステロイド内服、その他全身の状態により易感染状態の方はそのリスクが高くなると言われています。
結石性腎盂腎炎の治療には適切な集学的な内科治療に加え、尿管ステント留置や腎瘻造設といった早急な尿路ドレナージが必要です。
- 前立腺肥大症
- 過活動膀胱
- 神経因性膀胱
経尿道的前立腺切除術(TURP)術後の一般的経過
尿失禁とは
- 腹圧性尿失禁
急に立ち上がった時や重い荷物を持ち上げた時、咳やくしゃみをした時など、お腹に力が入ったときに尿がもれてしまう状態。女性の4割以上が悩まされます。骨盤底筋群の緩みが原因と言われ、加齢や出産を契機に出現します。
治療:骨盤底筋体操、薬物治療(β2刺激薬)、だめなら尿道スリング手術 - 切迫性尿失禁
急に尿がしたくなり(尿意切迫感)、我慢できずに漏れてしまう状態です。過活動膀胱や脳血管障害などが原因と言われ、男性では前立腺肥大症も切迫性尿失禁の原因になります。
治療:抗コリン薬、骨盤底筋体操 - 混合性尿失禁
①と②の病態がどちらも失禁の原因となっている状態です。 - 溢流性尿失禁
自分で尿を出したいのに出せない不全尿閉の状態です。排尿障害が必ず根本にあり、代表的な疾患は、前立腺肥大症です。
治療:尿道カテーテル留置、自己導尿 - 機能性尿失禁
排尿機能は正常にもかかわらず、身体運動機能の低下や認知症が原因でおこる尿失禁のことを言います。
経尿道的前立腺切除術(TURP)の入院期間と費用
通常、術後4~6日目頃に退院となりますが、 病状・術後経過により個々の患者さんで違いがあります。
入院・手術に伴う費用については健康保険が適用されます。
図5:膀胱全摘術
図6:腹腔鏡下膀胱全摘術(イメージ図)