腹腔鏡手術のエキスパートとして

泌尿器悪性腫瘍(腎がん、膀胱がん、腎盂尿管がん、前立腺がん)、泌尿器良性疾患(副腎腫瘍、腎盂尿管移行部狭窄症、尿膜管遺残症など)に対し、できる限り低侵襲な腹腔鏡手術を行っています。

腹腔鏡手術とは

腹腔鏡手術は全国的に普及された手術方法になりつつあります。
しかし従来の開放手術と比べより高い技術や知識、腹腔鏡手術のために種々の機器および器具が必要とされます。
現在、我々東京慈恵会医科大学附属 柏病院では様々な疾患に対してこの術式を施行しています。

腹腔鏡手術のエキスパートとして

腹腔鏡手術のエキスパートとして

泌尿器悪性腫瘍(腎がん、膀胱がん、腎盂尿管がん、前立腺がん)、泌尿器良性疾患(副腎腫瘍、腎盂尿管移行部狭窄症、尿膜管遺残症など)に対し、できる限り低侵襲な腹腔鏡手術を行っています。

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膀胱がんに対する腹腔鏡下膀胱全摘術

当院の特長の一つが筋層浸潤膀胱がんに対する腹腔鏡下膀胱全摘術です。年間約30例の症例数を誇り、また、自排尿が可能な回腸新膀胱を積極的に行ってます。

筋層浸潤がんの治療について

小径腎がんに対する経皮的腎凍結療法

当院では2012年に保険収載となる前の臨床試験の段階から行ってきました。2017年末の時点で200例以上の患者さんに行い、良好な局所制御率を誇ります。

腎凍結療法について

腹腔鏡手術の方法について

腹腔鏡手術の特徴は以下の通りです。

①出血が少ない

気腹圧を利用し静脈からの出血量の減少および輸血が回避しやすいです。

②傷が小さい

5mmから15mm程度の小穴を3から5箇所ほど開け手術を行います。

③術後の回復が早い

小さな傷跡で術後の痛みが少なく、回復も早いです。

  • 内視鏡(カメラ)でより拡大した視野を得られ、丁寧で安全な手術が可能
  • 手術チーム全員で同じ視野を共有し、解剖の理解および技術の向上に役立つ
  • 手術は術者(リーダー)、鉗子や吸引管などでアシストする助手、内視鏡で術野を映し出す内視鏡係(スコピスト)による巧みなチームワークが求められます。
  • 5mmから15mm程度の小穴を3~5箇所ほど開け、鉗子(手術器具)を自由に出し入れするためのトロカーを挿入します。手術中は、より安全に鉗子や内視鏡を操作するために腹腔内を二酸化炭素(CO2)で気圧します。CO2の気腹により静脈性の出血が抑えられます。最後に切除した臓器を小穴より摘出し終了します。

④より解剖学的な美しい手術の実践

腹腔鏡手術の発展の一因として近年のカメラやハイビジョンモニターの発展が挙げられます。
開腹手術では同定しえなかった膜構造が同定できたり、小さな血管を確実に視認、処理することができます。そのため、より安全で確実な手術が行えるのが腹腔鏡手術の最たる特長であると言っても過言ではありません。

このように腹腔鏡は優れた長所がありますが、以下に示すような合併症を起こす可能性もあります。また腸管の癒着が高度で手術操作が困難な場合、および問題が生じた際には、安全に手術を遂行するために開腹手術へ移行する場合もあります。

腹腔鏡手術に特有な合併症

  • 皮下気腫
    トロカー挿入部周囲からCO2 が皮下に漏出することによって起ります。
    多くは、数日で自然に吸収され軽快します。

  • ガス塞栓
    気腹に用いたCO2が血管内に入り、肺動脈に詰まってしまう状態です。
    非常に稀ではあるが、重篤な合併症の一つです。

  • トロカー部への再発・転移
    切除した臓器を摘出する際に、トロカーを挿入した部位へ再発・転移を起こすことがあります。
    泌尿器科領域での頻度は0.01%との報告があり、非常に稀です。
    その他、開放手術でも起こる合併症として、出血、他臓器損傷、術後腸閉塞、創ヘルニア、術後肺塞栓症などが挙げられます。

腹腔鏡手術の適応疾患について

  • 腎癌
    腫瘍の大きさ、部位により術式を選択します。一般的には腫瘍径4cm以下で、腎茎部周囲(腎臓を栄養する動脈、心臓へ血流を戻す腎静脈のある場所)に位置しない腫瘍に関しては、積極的に腹腔鏡下腎部分切除術を行っています。4-7cm大の腫瘍に関しても外方突出型で技術的に可能であれば腹腔鏡下腎部分切除術を行います。部分切除術が難しい部位にある腫瘍、大きな腫瘍に関しては腹腔鏡下腎摘除術を行っています。

  • 腎盂癌・尿管癌
    一般的な術式は腎尿管全摘、膀胱部分切除術です。当院では原則的に腎摘出のパートを腹腔鏡手技で行っています。下部尿管および膀胱部分切除のパートは基本的には開放手術で行います。

  • 膀胱癌
    原則的に腹腔鏡下膀胱全摘を行っています。尿路変向(尿の出口を変更する方法)は、図のように下腹部に5cm程度の小切開で行っています。

  • 前立腺癌
    一般的には、前立腺周囲へ浸潤した進行例を除き、腹腔鏡下前立腺全摘およびリンパ節郭清を行います。また、提携先の我孫子東邦病院でのロボット補助下前立腺全摘術も行っています。

  • 副腎腫瘍
    大きさにより適応を判断しています。一般的には4-5cm大までは腹腔鏡での手術を行っています。

  • 腎盂尿管移行部狭窄症
    成人の症例に対して、腹腔鏡下腎盂形成術を行っています。

安全面への取組み

腹腔鏡手術は、開腹手術同様、高い技術や知識が求められます。当院では、日本泌尿器内視鏡学会が定めた泌尿器腹腔鏡技術認定制度 の審査を受け、泌尿器科領域における腹腔鏡手術に関する技術を認定された医師のもとで、すべての腹腔鏡手術を行います。
さらに慈恵医大では、より安全な手術を行うために、腹腔鏡手術に係わる医師に、鏡視下手術トレーニングコース試験が義務化されており、合格者のみが実際の手術に参加することが認められております。