コラム

2020.06.12更新

今回、我々が力を入れている診療の一つ、膀胱全摘術に関する教科書、「 究める鏡視下膀胱全摘術・尿路変向術 Level up LRC,RARC 」が メジカルビュー社から出版されましたので、ご報告します。
https://www.medicalview.co.jp/catalog/ISBN978-4-7583-1272-1.html

 

 教科書

もともと膀胱全摘は、泌尿器科の手術の中では、長時間で合併症も多く、もっともリスクの高い手術とされております。しかし、膀胱全摘自体の手術件数が少なく、年間20件以上行っている施設は国内ではわずかで、いまだに手技の標準化が十分にされていない手術といえます。
我々の施設の膀胱全摘の件数は、22件(2015年)、25件(2016年)、33件(2017年)、36件(2018年)、39件(2019年)と豊富な診療実績があります。
こうした診療を通して得た知見をもとに、私、三木淳と柳澤医師、そして全国の膀胱全摘術のエキスパートとともに、腹腔鏡とロボットによる膀胱全摘の手術書を執筆いたしました。
これまで、膀胱全摘に関する教科書は少ないうえ、腹腔鏡やロボットによる膀胱全摘の教科書はありませんでした。そこで、本教科書では、腹腔鏡,ロボットという 低侵襲手術の時代における 骨盤解剖に基づいた手術手技、最新の腹腔鏡・ロボット手術の手技や工夫、トラブルシューティングなどを記しました。

この術書により、泌尿器癌手術の進歩はもちろん、膀胱癌で手術を受ける患者さんに少しでも質の高い治療が提供できるようになること願っています。


以下、「 究める鏡視下膀胱全摘術・尿路変向術 Level up LRC,RARC 」の序文より抜粋

「私は,冒頭で紹介した「忘れられない手術」を機に,手術の際に肝に銘じていることがある。それは,「常にベストの一手を目指す,そして失敗から逃げない」というものである。どんなに大きく複雑な手術も,小さな手技の組み合わせであり,それら一つ一つにベストな一手があり,そのベストな一手を目指すことで手術はより進化する。そして,明らかな失敗はもちろん,どんなにうまくいったと思った手術でも,期待を裏切る結果が起こりうるのが手術である。こうした失敗から逃げずに,常に学ぶ姿勢を取ることは,術者なら当たり前のことだが,いざ失敗を経験すると難しい。本教科書では,エキスパートの術者達が,これまでの失敗からたどり着いた,現時点での膀胱全摘術におけるベストな一手を記したつもりである。
 本書が,根治的膀胱全摘術を執刀する泌尿器科医にとって,座右の書としてお役に立てることを切に願っている。」